福島市 村上耳鼻咽喉科医院

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風邪(耳鼻咽喉科の立場から)~たかが風邪と油断しないで~

風邪は身近な疾患ですが、「たかが風邪」というイメージから、つい油断してしまい、つらい思いをしたことがあるかもしれません。よく“風邪は寝て治せ”と言いますが、軽症のうちは身体の抵抗力(免疫力)で十分治り得るものです。しかし、逆にがまんをし過ぎて重症になってしまうこともよくありますので、どのような時に医師を頼ってほしいかを耳鼻咽喉科の立場からお話したいと思います。

風邪とは、種々の風邪ウイルスの感染によるもので、鼻水・頭痛・寒気・のどの不快感などを初期症状とし、通常は発熱もそれ程強くありません。(ただし、インフルエンザウイルスは別格で、初期から高熱など全身症状が強く出ます。)しかし、その後長引いた場合は、弱った体にウイルスの次に細菌が襲いかかってきます。鼻やのどや肺に細菌感染が起こり、過労やストレスなどで抵抗力がない場合、細菌に勝つことができず、発熱などつらい症状が悪化してきます。

さて、ウイルスと細菌ということばが出てきましたが、どちらも人間に感染する力をもつ微生物であることはご存じと思います。ただ、治療を考えますと、細菌に対する治療薬である抗生物質はたくさん作られていますが、ウイルスは細菌と異なり頑丈な構造をしていますので抗ウイルス剤を作るのは難しく、インフルエンザのような社会的な問題になる一部の風邪ウイルスに対してだけ作られています。

ふだん一般的な風邪と呼んでいるもののウィルスは多種存在し、それらに対する薬は無いのが現状です。市販の総合感冒薬は鼻水止めや解熱などの対症的な成分がまとめて入っているだけです。したがって、一般の風邪の初期の状態に特効薬的なものはなく、軽症のうちに“寝て治す’’ということになるわけです。しかし、二次的な細菌感染の状態になった場合には、抗生物質などの投与が必要になってきますので、特に過労やストレスの自覚のある方は早期受診をお勧めします。では、どのような時に受診すればよいのでしよう?

鼻汁や痰(たん)が、濁って色がついてきたら要注意!

風邪の初期には、鼻汁は多くは透明ですが、長引くにつれて黄色や緑色の膿(うみ)のような色になってくることがあります。初期の透明な鼻汁の時期なら、市販の総合感冒薬等を服用しながら、安静を保つことなどで治ることも期待できますが、膿性になってきますと抗生物質など病院で処方される薬が必要となってきます。“たかが鼻水”といって放置しますと、耳にも影響し中耳炎になってしまったり、悪化して頭痛などが強くなり重症になることもありますので、受診をお勧めします。

のどの痛みが強くなってきたら

のどの痛みが軽いうちは市販の総合感冒薬と自力で治ることも期待できます。しかし、悪化し始め、食事のときも痛むようになり、見ても赤く腫れ、ましてや白い膿がついてきたようなときには受診しましょう。悪化が進み、のどの周囲まで炎症が広がると水も飲めなくなり、入院しなければならないことが珍しくありません。もっとも重症なものは、口を開いても見える範囲は赤くも腫(は)れてもいないのに強い痛みがある場合です。舌の奥下方の見えない所にある気管の入り口が腫れる場合です。強い痛みだけでなく、腫れが高度になると呼吸困難になってしまい生命に関わる緊急状態となることがあります。耳鼻科医がもっとも恐れる状態の一つです。

心身の過労やストレスが、自律神経を介して身体の抵抗力(免疫力)を低下させることは、医学的にすでに証明されていることです。一般の方も頭では解っているとおもいますが、多様複雑な現代社会の中では仕事や家事などによる過労、ストレス対策がなかなか実行できていないのが現実です。対策として私が一番大切と思っていることは睡眠です。毎日睡眠をとることで脳の疲労がリセットされ生涯、体の機能が保たれるわけです。
風邪に勝つために、また健康的に余裕のある生活を送るためにも、日頃の体調ケアを実行してください。

耳のかゆみについて ~外耳道湿疹(がいじどうしっしん)~

耳鼻咽喉科でよくみられる疾患に外耳道湿疹があります。耳の穴の中の皮膚にできる湿疹です。耳の痒み(かゆみ)があり、綿棒や耳掻き(みみかき)でいつもいじってしまっている状態です。一度痒みが生じてしまうと掻くことを止めれなくなり、掻き続けると痛くなり、耳だれも出てしまうことがあります。そこまでひどくなくとも、いつも痒みを感じている方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

その原因の一つが、多くの方がしている、いわゆる“耳そうじ”にあるからです。“耳そうじ”は耳垢(みみあか)を取ると同時に耳の皮膚を擦って(こすって)いますので痒みが出てしまうことがあります。一度痒みが出てしまいますと我慢が出来なくなり、悪化する一方となるわけです。

では、どうすればよいかと言いますと、できるだけ入り口の所だけを軽く拭くだけか、もしくは綿棒等の道具を使わずに、お風呂の後でタオルを使い、指で届く範囲で拭き取るだけが無難でしょう。そこでよく受ける質問は「それではどんどん耳垢がたまってしまうのでは?」ですが、基本的に耳垢は耳の入り口だけで皮膚が作り出しているもので、少しづつ外へ向かって排出される仕組みになっています。

耳垢の中には殺菌作用をもつ成分も含まれ、実は耳の門番役を担っていると言うこともできる物なのです。べたべたした耳垢、いわゆる“ヤジ耳”、“アメ耳”なども同じです。耳そうじをしていますと痒くなるだけでなく、少しずつ奥へ押し込んでゆくことがあり、完全に栓のように詰ってしまい、聞こえが悪くなり受診される方も多く見られます。

また、お子さんなどがぶつかってきたりして、道具を突き刺してしまい、鼓膜に穴が開いてしまうこともあります。体質によっては、耳垢が多く、いじらないようにしていても詰まってしまう方もいらっしゃいますが、原則的にはそうじをしない方が耳垢が詰まらないという、多くの方には意外な仕組みになっているのです。

補聴器を考えている方へ ~特にご高齢の方の場合~

高齢者の方の難聴は残念ながら治療による改善は困難なのが現状です。
しかし、補聴器の進歩により日常生活における不自由さをカバーすることは決して困難なものではなくなってきています。「どうせ補聴器を買っても、うるさいばかりで役に立たない」などと敬遠する方がいらっしゃいますが、使い始める時の注意点、心構えなどをわかっていただければ、きっと使いこなせるようになり生活に大きく役立つはずと思います。

大切なことは、補聴器は、着けてすぐに心地よく聞こえる方は少ないということを心構えとして持っていて欲しいことです。着ける前は、聞きたい音だけを大きくしたり、大きく話してもらったりして、余計な音を聞かずにいる生活に慣れていますので、着けた後は、聞かなくてもよい音を聞かなければならないという不愉快さを感じる事も少なくないようです。しかし、その方の聴力の程度に応じた補聴器の調整を根気よく繰り返し受け、ある期間を努力していただければ慣れることが可能で、常に使用して生活することができるようになります。

その間、周囲の方がほんの少しゆっくり話しかけていただくことで聞き取ることが容易になりますので、周囲の方の協力もとても重要です。また、一度も専門医(耳鼻咽喉科)の診察を受けたことのない方は受診をお勧めします。耳垢(みみあか)で完全に閉塞されていたり、気付かれにくい中耳炎になっていたり、その他の疾患が見つかる場合もあります。

そのまま補聴器を使用しても十分な補聴器の効果が得られないこともありますので病気がないことを確かめることが一度は必要です。補聴器を考える時期ですが、多くの方は、かなり聞こえが悪くなってからで良いと考えていらっしゃると思いますが、あまり悪くなってから使い始めようとすると補聴器に慣れることが難しくなってしまいます。また、時期を逸してしまい積極的な会話をあきらめてしまい、引っ込み思案になってしまうこともあります。ある程度聞き返しが多くなったら、まず自分の聴力を知るために受診されることをお勧めします。積極的に快適な生活を求めていただきたいと思います。

知っていますか?過労、ストレスが原因の耳鼻咽喉科の病気

突発性難聴=文字通り、急に耳が聞こえなくなってしまう病気です。急に耳が詰まった感じが生じ、痛みなどはありません。原因不明のことも多いのですが、疲労やストレスが内耳の血流障害を起こすためとも考えられています。治療をしても難聴が残る場合がありますので、早期に診察を受けてほしい病気です。重症の場合は入院治療が必要なこともあります。

咽喉頭神経症=食事するにはまったく問題がないのに、のどに詰まった感じが長い間あり、何回診察を受けても原因となるような異常はないものです。心身の疲労、ストレス、がんへの恐怖心がその人を弱気にさせ、不安が生じているものです。

重症な咽頭炎(のどかぜ)=最初は、軽いのどの痛みだったのが、段々ひどくなり水も飲めなくなってしまい、入院しなくてはならない程になる事があります。さらに炎症の場所が気管の入り口で強く起こると呼吸困難になり生命に関わる場合もあります。疲労やストレスが続くことで抵抗力(免疫力)が低下することが悪化する原因の一つと考えられています。市販の風邪薬を使っても悪化する傾向があれば我慢せずに早めに受診してください。

メニエール病=めまいを繰り返す病気です。耳には平衡感覚を保つための機能もありますが、この機能が疲労やストレスによる循環不全で障害されると考えられています。典型的な症状は、強い回転性のめまいに難聴、耳鳴り、吐き気を伴いますが、伴わないものもあり、耳の病気と分かりにくいこともあります。生命に関わるものではありませんが、繰り返し起こり治療が困難なこともあります。

いずれの疾患の治療は薬を使うことが主ですが、その効果は疲労に対する対策として睡眠を多くとるなどを実行できるかどうかで大きく左右されます。患者さんの多くはいつも過労やストレスの状態でいる、いわゆる企業戦士や子育て中の主婦の方などです。これらの病気にかつためには医師や薬の力だけで治るものではありません。皆さんが自分を管理して予防、治療していくものであることを理解してほしいと思います。

過労、ストレスが原因の「めまい」や「耳鳴り」「難聴」

内科や脳神経外科などで異常が見つからず、めまいや耳鳴りが改善しないため受診される方が少なくありません。治療を受けても、背景にある過労やストレスが解消できていないために良くならないことが多いのです。

ある日突然、片方の耳の聞こえが悪く(つまった感じに)なる「突発性難聴」、めまいや耳鳴り、難聴を何回も繰り返す「メニエール病」などが代表的です。過労やストレスにより耳の奥にある内耳の一部(平衡感覚を維持する部分)に循環不全などが生じ発症すると考えられています。薬の内服が治療法ですが、大切なのは、過労、ストレスを解消する対策を本気で実行していただくことです。

過労、ストレスの原因は各年齢層でさまざまです。具体的には30~40歳台では、休み無く働く過酷な労働環境、それに伴う対人関係、50~60歳台では中間管理職としてのストレス、介護、意外なこととしては小さいお孫さんのお守り、それ以上の年代では老老介護、不眠症、意外なことでは、自由な時間ができそれまでできなかった趣味への没頭による睡眠不足、などなどです。女性に多い理由としては、まじめで責任感が強く、また完璧主義的な性格の方が多いからかもしれません。

治療に関してよく患者さんにお話しすることは、「お薬を飲んでも疲れは取れないですよ」という当然のことです。仕事量をコントロールし、睡眠を確保し、リラックスする時間を作るなどの対策を計画的に実行し、自分の体のことを考えてあげる意識改革をしていただくことが治療の本質と考えています。実は、長引くカゼ症状などに対しても同じことが言えます。過労やストレスが体の抵抗力(免疫力)を低下させることがわかっているからです。多くの病気の治療の主役は医療ではなく本人であるという理解が大切です。

耳、鼻、のどの異物

耳や鼻、のどに異物が入ってしまったり、刺さってしまうことがあります。基本的には自分で取ろうとしますと、さらに奥へ押し込んでしまう事が多いので、耳鼻咽喉科に受診していただいたくことをお勧めします。ただ、それぞれに注意点がありますので少しお話したいと思います。

耳の穴の異物で意外に多いのが、自分で綿棒や耳掻き棒を使い耳そうじをしていて、耳あかや髪の毛などを奥へ押し込んでしまう事です。耳の詰まった感じや「ガサガサ」とした音が苦になり受診されます。耳そうじはお風呂の後などに、入り口の水分を吸い取るだけにしておくのが無難です。鼻の異物は、やはり幼児に多いのですが、入れるところを見ていなければ気が付かないでいることもあります。ただ、入れたものがティッシュ、スポンジのようなものですと鼻汁を吸って感染を起こし、入れたほうの片側の鼻の穴だけから、濁った鼻汁が出続けていることがあります。

のどの異物はほとんどが魚の骨です。ご飯を丸飲みすると良いなどと言われていますが、一度刺さったものはなかなか抜けることはなく、時間も経ちますとかえって奥へ埋没し見つけにくくなる可能性がありますので、なるべく早期の受診が良いでしょう。異物を飲み込んでしまう場合、食道に入ったものは小さいものは便中に排泄されますが、大きいものは食道異物となります。

幼児で時々見られるのは硬貨です。飲み込みが悪くなる事もありますが、気づかれない事もあります。乳児ぐらいで特に怖い異物にボタン電池があります。これは食道に引っ掛かったままになりますと、微弱電流により食道に穴があいてしまい重症になる事があります。気管に異物が入った場合は、強い咳の発作がみられます。その後、呼吸音が異常になったり、顔色が悪くなったりしたら窒息の危険性もありますので、迷わず救急で受診することが必要です。

乳幼児で比較的多い気管異物は、ピーナッツや枝豆などの豆類です。かけらになって、吸い込みやすくなるからです。食物を口にいれたまま歩き回ったりしていて、転んで泣いた場合に発生することが多いので、行儀をしつける意味でも徹底して防止してください。

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